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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

蛇を貸せというお絹の依頼

「さあさあお歩き太夫さん、一人は右へ一人は左、恋しいお方を尋ねてね」

そこでまたもや唄い出す。

寂しい寂しい唄である。唄の文句や節に託し、感情を洩らしているのである。ズルズルと解けた二匹の蛇、左右へスルスルと動き出した。

その時見物を掻き分けて、つと前へ出た一人の女、他ならぬ鷺組のお絹であったが、山かがしへ眼をつけたものである。

蛇を貸せというお絹の依頼

やまかがしへ眼を付けた鷺組のお絹、心で呟いたものである。

「ほんとに上手に慣らされているよ。何んでも云うことを聞くらしい。お仙さんとかいう太蛇使い、さすが大江戸の芸人だけあって、水際立った立派な芸、それに大変美しい。山影宗三郎という人を、尋ねて来たということだが、水戸様のご家来山影様なら、まだお姿こそ見ていないが、同じご家中というところで、よくお噂は聞いたものだ。妾達鷺組と同じように、特別大事な任務を持ち、木曽の御岳へ上られた筈、お仙さんの云うことに嘘がないなら、名古屋へ入り込んでいるらしい。是非邂逅ってみたいものだ。……それはとにかく慣らされた小蛇、あれをどうともして借り受けて、秘密の小口を探ってみたいものだ。