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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

脱出をした烏組のお紋

の看板が上がっている。

その前に佇んだ数人の男女、役者の品評に余念がない。

「いや、八重梅のお三輪ときては、八重桐以上だということだの、芸も芸だが縹緻のいいことは! 水の垂れるという言葉は、八重梅のために出来ているようなもので」こう云ったのはご隠居さんだ。

「さてその八重梅だが情夫があるそうだ。どうせ女の芸人のこと、あっちを引っかけこっちを引っかけ、あくどく稼ぐのはいいとしても、情夫を持つとは気が知れねえ」こう云ったのは侠の兄さん。「それもさリャンコだということだ」

するともう一人が口を出した。

脱出をした烏組のお紋

するともう一人が口を出した。

「こいつア正にお説通りで、女芸人ともあるものが、情夫なんかこしらえちゃアいけませんねえ。よろしく旦那は一時に、五人以上持つがよく、他に客色を三人ね。で両方から金を絞り、誰にも貢がずに自分だけで使う! こう行かなければ人気が立たない。そうして何んだ、女芸人、一生の間に親方の金を、厭というほど踏み倒さなければ、一人前とは云えませんねえ。ところが当今の女芸人、わずかばかりの借金に、気を腐らせて世が厭になり、心中の相手なんか目付けるんですからねえ。