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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

玄関における別離の挨拶

と荻野八重梅、驚くばかりにハッキリと、断末魔の勇気で云ったものである。「幹様! ……それでは……あんまり寂しい! ……あんまり! 幹様! 幹様! 幹様!」

「ああ縋るのだ! 今ばっかりへ! ……何んにも見えない! 音が聞こえる! 誰かが遠くで……唄っているようだ!」

「幹様!」

無言。

「幹様!」

無言。

「もう死なれたか! ……それでは妾も……」

グ――ッと八重梅地へ仆れた。

「八重梅!」

無言。

「私の八重梅!」グ――ッと幹之介も仆れかかった。折り重なった。八重梅の上へ!

ボ――ッと常夜燈が照らしている。火事の光が照らしている。

三つの死骸! 幹之介と八重梅、そうして阪東薪十郎!

愛も憎みも、死ばかりが審判いた。

玄関における別離の挨拶

薬草道人の出発したのは、同じその夜のことであった。

城の玄関昼のように明るい。

正面に立ったは尾張宗春、風采容貌打ち上がり、高朗としてまさしく貴人、威厳と柔和兼ね備わり、四辺を払うばかりである。

背後に居並んだは一藩の重臣、ご加判衆をはじめとし、城代、側用人、各奉行、用人、大目附け、大番頭、小納戸頭、小姓頭、奥医師同朋さえ居並んでいる。