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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
「週刊朝日」1930(昭和5)年10月号~1931(昭和6)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,006 字 · 182 页
「誰と来たの?」
「姐さんと」
「どうして、おっ母あが病院へはいったのを、おめえに、分ったんだろう」
「警察の人が金春へも調べに来たのよ。わたしみんな聞いたわ、兄さんは、警察でも手こずッている不良少年なんですって。こんど捕まえたら、八丈島の感化院へ送ることに極っているんですって。……兄さん、悪いことをするのはもう止めてネ……」
「ふふンだ! 誰がくそ、感化院なんかへ行くかい!」と、トム公はむきになって怒りつけた。
「おれが悪いことをしたッて、何時おれが悪いことをしたか、おれは、掏摸や泥棒なんかしたおぼえはねえぞ、警察のやつが来たら言ッてやれよ」
彼のみはそう言って、独りで気概を昂げていたが、豆菊は垣の外でほろほろと泣いているのだった。――寒そうに、そして、世の中の何もかも、すべてが凍え切って、すべてが真っ暗のように。
「……兄さん」
「泣くない、馬鹿だな」
「おっ母さんは、死ぬんじゃないの」
「…………」
「わたし、お座敷にいても、寝てからも、それが心配になって。……ねえ兄さん、おっ母さんが死んだら、私たちは、どうするの……」
「死にやしないよ、病院にいりゃ大丈夫さ。