轻松读懂日语经典作品
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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
「週刊朝日」1930(昭和5)年10月号~1931(昭和6)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,006 字 · 182 页
――それは競馬界で島崎とよばれている売出しの騎手だった。
内外人の女たちにもてて、体がいくつあっても足りないほど騒がれているというこの根岸の花形騎手も、つい数年前まではメリケン波止場で砂糖馬車組合の幌荷馬車に鞭を打っていた労働者だったのである。――しかし島崎は自己の才分を生かしていつか悧巧に波止場ゴロなどとの縁を切って、今では山の手に庭園付きの宏壮な邸宅や厩舎をもって、取り澄ましている。しかし、なかなか昔のゴロ仲間の方からは縁を切らさないので、人気商売として、かなりその操縦には腐心が要った。また、トムは彼をそうまでよく知らなかったが、彼の方ではトムをよく知っている様子だった。
「トム、おまえ逃げて来たな」
トムは笑って答えなかった。
「探していたぞ、お光さんが」
「お光さんはどこにいるでしょうか」
「ゆうべ僕の厩舎へちょっと見えたが、さあ、きょうは競馬にいるかどうだか。何しろ、おまえのことで狂奔していたからな」
「何しに行ったんだろう? お宅へ」
「それは話せない」
と島崎は意味ありげに笑った。
回転盤
「おまえもお光さんを探しているんだろう」
「お光さんに会わなければ、困ることがあるんだもの」