轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
「週刊朝日」1930(昭和5)年10月号~1931(昭和6)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,006 字 · 182 页
「諸君、お芝居はハネましたよ」
お光さんは、夫人の狼狽を冷笑しながら、小型なカメラをかかえて、すばやく、庭園を横ぎった。誰の足もはやかった。――だがひとりトム公だけは、みんなが逃げる方角とは反対に、さっき豆菊と会った裏手の海岸の方へ駈けだした。
彼は、もういちどそこに待っていると言った妹との約束にひかれたのだった。しかし、彼はすくなからずそれを悔いた。座敷から、風呂場から客間から、いちどに、吐き出されて来た人間は、彼ひとりを見つけて、大げさに追い廻して来た。
一方が、海であるだけに、トム公は逃げ場を失ってしまった。風呂番の男のたくましい腕が、まず彼の襟がみをつかんで、外人だの、ガイドだの、召使だの、ほとんど彼のすがたをつつんでしまうほどの人群が、そこに度胸をすえて坐ってしまったトム公をかこんで、がやがやと騒いだ。
「この少年、ドロボウ?」
一外人の質問に、通弁は言った。
「いいえ、かんかん虫」
「かんかん虫? あ、かんかん虫? ……」
外人は、分ったような分らないような顔をして興がった。主人の理平も来た。千歳の女将も来た。芸妓たちものぞきに来た。
「電話をかけておいたろうな、警察の方へ」