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かんかんむしはうたう
かんかん虫は唄う
吉川 英治
「週刊朝日」1930(昭和5)年10月号~1931(昭和6)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,006 字 · 182 页
それはまあ、これからの工夫として――私が心配しちまッたのは、おまえの方さ」
「それで、みんなが来てくれたのか」
「山手警察にいる女小使いのおしげさんに、人をやって、聞いてみると、案の定だから、あわてて、みんなを糾合したッてわけさ。トム公、おまえ、いくら歯ぎしりしたッて、そんなどじじゃ仕返しはできやしないよ」
「おれたちは、まだ詳しいことを聞かないんだが、いったいトムの復讐っていうなあどういう真相なんだね」
愚連隊たちは、それぞれ、椅子や寝台や家具の端に、腰をすえて、濛々と、ピンヘットの煙を立ちこめた。
「トム、お話し」
「めんどくせえや」
「じゃ、私が、代りに話そうか。こういうわけさ――それも宵に薬師の縁日で、トムから聞いたばかりなんだけれど」
お光は流暢なことばで、トムの代弁者となって、金満家の高瀬理平と夫人お槙の不都合な点を熱をもって語りだした。トムが、彼らから、恩を仇で酬われたことについて、彼女は、トムと同じ悲憤をおびて話した。
「イヤ、そんなことは、どッちでもいいんだよ」
トム公は、彼女のことばを遮って、小さな拳を、卓のうえに、突ッ張った。
「自分の遺恨は、自分でかえすよ。