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かんかんむしはうたう

かんかん虫は唄う

吉川 英治

「週刊朝日」1930(昭和5)年10月号~1931(昭和6)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,006 字 · 182 页

青空文庫

東京市本郷区湯島仕立屋銀次方――と鉛筆で書いたのを、お光さんに渡した。

山の下には、もう谷戸町や北方の町に、美しい灯がともっていた。

「どうですか、諸君」

常と別れてから、お光さんは、ナンキン墓を下りながら双手をあげて、

「こん夜は、トム公のために、乾杯してやろうじゃないの。そして私は、この金剛石の指環を、柳田のお狒々さんに、二千円で売りつけてやるよ」

「二千円?」

みんな、嘆め息をあげた。

「アア二千円よ、そしてさ、百円は亀田の家族にやっとくよ、そして、百円はトム公のおっ母さんに上げっちまうよ! そしてあとの千八百円をどうすると思う?」

「むろん、こっちへも渡るだろうな」

「仲間割れをしッこなしさ。合資会社ということがいいじゃないの。諸君! 八百円をわれらの合資会社の資金として、根岸の競馬はどうですか」

「異議なし」

「さんせい!」

「だけれど諸君、競馬ばかりに熱中しちゃ困るわよ。まず、指環の真犯人はいつでも出せることになったから、これからは、高瀬理平への策戦よ。でなければ、なんらの意義がなくってよ、ねえトム!」

トム公は、愉快で愉快でたまらないように、足を弾ませて、三鞭のコロップみたいに踊りながら、