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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

わが家のツツジを庭師にきくと

「これはキリシマですよ。山ツツジは町の中にはめったにないですよ」

という話で、要するに金魚の死因も分らなくなってしまったのである。家主の家の老女中に金魚がみんな死んだ話をすると

「あの池は金魚の死ぬ池なんですよ。ウチでも放すとたんに死にましたね」

変な池だ。それはつまり池が空中に浮いてるために金魚が心臓を痛めるのであると新説を主張してゆずらぬ人士も現れたが、私はすべて邪説を一蹴し

「よーし。必ず金魚を生かしてみせるぞ」

また三十匹放させた。金魚屋のオヤジもおそるおそる手ミヤゲにボーフラを持参して現れて

「変だねえ。金魚がいくら死に易くってもそうむやみに死ぬもんじゃないよ。オレのウチの金魚が悪いせいじゃないよ」

ブツブツ云いながら金魚の人工呼吸法などを女どもに伝授して帰って行った。

この中からも十五匹ほど死んだが、死ぬたびに補充して病金現れるや人工呼吸をほどこし、日夜水を調節し、ついに秋の頃には死なない金魚を飼いならしてしまったのである。近所のドブに、否、わが家のドブにすら糸ミミズが豊富であるから、朝晩これを食事に与え、その発育の目ざましさは金魚屋を驚倒せしめた。