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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

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呉清源はそれを食べ、タマゴを落したミソ汁をのんで朝食を終り、定刻九時にややおくれて対局がはじまった。

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握った結果、呉清源の白番ときまった。このとき岩本本因坊が、いかにも困ったナという顔をしたのが印象的であった。互先の十番碁であるから、コミナシである。さすれば黒番絶対有利だから、黒番ときまった本因坊のいかにも当惑したような顔がフシギであった。あとで本因坊に訊いてみたら「こういう重大な対局の第一局というと堅くなりますから、負けてフシギのない白を握る方が気持が楽で打ちよいような感じがするんですな」ということであった。黒番だと是が非でも勝たなければならないという気持に追われるのが苦痛で不利だというわけだ。

たしかに勝負というものは、そういう気分でかなり支配されるもので、秀策流に黒番絶対というわけにゆかないものであろう。呉清源が宗教に走らざるを得ないのも、勝負というものが黒番絶対というような理づめだけで扱いきれないものがあるからに相違ない。

しかし、本因坊の当惑顔がいかにも受けた打撃が深刻らしく甚だ印象的であったから、先手後手だけのことでこれほど心が動くようでは本因坊が危いのではないか、ということが何より先に感じられてならなかった。