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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

3

なにぶん私の外套のポケットには私の飲みしろに用意してきたウィスキーが一本ぶちこまれている。新聞社の人々は「名古屋に於ては名古屋の酒を」と云って、はじめはなかなかウィスキーを飲ませてくれなかった。相当酒がまわってからウィスキーを飲みはじめたから、なおいけなかった。

おまけに新聞社の御歴々は見かけのゲリラ風にも拘らず、義理堅いこと夥しく「その貴重なるウィスキーは一滴たりとも我々の受くべきにあらず」と固辞してついに誰も受ける者がいないから、ウィスキーは升田と私がほゞ半分ずつ、一滴ものこさず飲みほしてしまったのである。そこで升田が酔っぱらってしまった。

「木村は弱い。ワシァ木村を負かしたとき、あとで並べて研究してみたら、読みの深さが違うとるのを発見して、なんや木村ちゅうのはこんなもんか思うた。こんなヘボには負けとうても負けられん。なんぼでも負かしたる」

次第に大きな声で叫びはじめた。元々地声の大きい升田のことで、ついに部屋一パイに響き渡る大音声となってしまった。

3

木村もはじめのうちは苦笑しながら

「まだお前なんかに負けねえよ」

とつぶやく程度であったが、升田は泥酔しているから非常にしつこい。