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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

桜の花ざかり

夏の甲子園の北関東大会も去年は桐生で行われたが、優勝侯補筆頭の桐生工高を破って甲子園へ出場したのが水戸商高で、その遊撃がいま西鉄の新人豊田であった。

昔から高校野球は巨人ばやりで、やたらに図体の大きいのを選手に仕立てたがるが、図体が大きいだけが能じゃない。豊田選手は相当に図体は大きいけれども、スタートは早いし、肩はよし、打撃はよくふるっており、抜群の素質を示していた。めったに出てくる選手ではない。

たまたま読売の記者が来たとき、彼の話をして巨人へ引ッこぬきたまえとすすめたが、すでに西鉄と契約の後だった。この豊田君が加入のせいで、私はちかごろすッかり西鉄ビイキになってしまった。

桜の花ざかり

戦争の真ッ最中にも桜の花が咲いていた。当り前の話であるが、私はとても異様な気がしたことが忘れられないのである。

焼夷弾の大空襲は三月十日からはじまり、ちょうど桜の満開のころが、東京がバタバタと焼け野原になって行く最中であった。

私の住んでるあたりではちょうど桜の咲いてるときに空襲があって、一晩で焼け野原になったあと、三十軒ばかり焼け残ったところに桜の木が二本、咲いた花をつけたままやっぱり焼け残っていたのが異様であった。