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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

ドデウ論争

つまり空想という無限のものにも実はおのずからの限界があって、それ以上は空想にしても納得できない、夢物語にしても納得できないというおのずからの一線があるのだろう。

現代の兵器はその空想の限界すらも突きぬけてしまったのだ。私の耳には猿飛佐助と霧隠才蔵の会話がきこえてくるのである。

「広島と長崎に黒い雨が降って何十万という人間が死んだとよ」

「ピカッと光ったら、みんな死んでたそうだ。どうだい。アニイの忍術も、できるかい」

「できやしねえや。オレのできないことをやるようじゃ、おッつけ人間は亡びるぜ」

猿飛佐助の意見によると、破壊力が忍術の限界を越えた時が、戦争をやめる時だそうだ。

ドデウ論争

熱海の来の宮に重箱というウナギ屋がある。もと東京下谷に江戸時代から名のあった家である。熱海の奥にひっこんで以来も味の落ちることはなく、私の食った限りでは、天下にここよりうまいウナギはない。

重箱のオヤジは江戸は下谷で久保田万太郎宗匠と小学校を一しょに卒業した仲であるが、彼の主として用いるウナギは九州ヤナガワのものか東京でクダリと称する近在のウナギかで、いくら腕自慢でも原料が悪いとうまいカバヤキはできないそうだ。