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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

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しかし、木曾の樋口家には念流は伝わらない。念流はもっぱら馬庭の樋口家に当主で二十四代の血脈と流儀を伝えている。

昔のままそっくり今も姿を伝えているというので、私は道場の新年鏡びらきの祝儀を見物にでかけた。

なんとまア、今の世に、こんなほほえましい風景を見ようなぞとは夢にも思われないようなことであった。

私は何気なく門をくぐったが、門につらなる物置のようなのが、実は昔のままの道場なのであった。

門の中、庭先には、アメ屋や、オデン屋や、フーセン屋や、オモチャ屋などが店をだして、村の祭礼と同じようにピイピイ、ジャカジャカやっている。鏡びらき祝儀の試合はこの中に三十枚のムシロをしいて行うのである。昔からの例だそうだ。

村の祭礼風景と同じようなのは当たり前だ。門弟はみんな村の百姓で、四天王も村の百姓だ。つまり馬庭では道場の祝儀にまさる祭礼はないわけだ。村をでて都会で家をなしている八十の老門弟もこの日のために帰郷してなつかしい剣を握る。感動が顔にかがやいている。

門構えとそれに連る道場だけは物々しかったが、樋口家自身もたった四間の小さな百姓屋なのである。

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真庭念流の稽古では、今もって昔ながらの独特の面小手を用いている。