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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

松井大将の書斎

さて部屋へ通されて参った。三十畳敷というバカ広い部屋で、キャッチボールができるほどだ。

「京都は冷えまっさかい、オコタ用意しましょ」

と気をきかしてコタツを用意してくれたが、三十畳のマンナカに小さなコタツに当たってると、三十畳の寒気がウワァーッと背中へしがみついてくるのである。一夜でカゼをひいてしまった。

この部屋を一足でると便所があったが、この便所にはまだ電燈がひいてなかった。むろん建物全体が電燈以前の存在であるが、現代に至ってもまだ便所にまでは電燈をひかなかったというノンキな話なのである。居住に適しない家というのがあるもんですよ。

松井大将の書斎

熱海の伊豆山のはずれに桃李境という静かな旅館がある。伊豆山もここがはずれで、あたりは海と山ばかり、いささか人里はなれた不便な場所である。私は数年前、よくここへ仕事にでかけた。当時久米正雄氏もここを仕事場に使っていたようだ。

この旅館は部屋の造りが新婚旅行とかアベック向きにできていて湯殿も便所も附属して独立しているから、我々の仕事部屋にも都合がよかったが、土曜日曜になると、やっぱり団体がおしかけてくることが多い。