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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

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しかし、一見、変なヘッピリ腰で、いかにも、野良の百姓がクワやスキの片手間に会得したような風変りなものに見えるから、ヘッピリ腰の百姓剣法などと他流に笑われ易かったらしいが、実はアベコベで、これぐらい真剣勝負だけ考えて、必殺を狙った剣法は珍しい。その必殺に凝った激しい狙いが、逆にヘッピリ腰の百姓剣法に見えるだけなのだ。

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真庭念流の道場には豪傑然とした、また武芸者然とした人が一人もいない。二十歳から八十いくつまでの高弟全部が集まっていたが、七十をすぎている人も数名はおる。いずれもただの里の人々である。

今まで握っていたクワを捨て、手足と顔を洗って、折目のついた縞の着物に着代え、木綿のゴツゴツした袴をはいて現われてきた人たちで、まれに一、二名紋服を着ていた老人もいたが、多くの老人は生涯紋服を着たことのなかった人であろう。最高の晴れ着といえば、折目のついた縞の着物で、いまそれを着て、袴のモモ立ちをとって、木剣を握っているのである。

平々凡々たる農民たち、むしろよその農民よりも人相のやわらかな老いたる農夫たちが、ひとたび木剣を握って「無構え」に構えた瞬間、唐突に人相が一変してしまう。