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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

豪勢な貧乏

しかるに多くの人々はおのずからコンニャクとナマコを食べこなしている。人間はタンゲイすべからざるものである。

豪勢な貧乏

私は長らく昔なら語り草になるような貧乏ぐらしをやってきた。しかしそれも「昔なら」で今では全く珍しくない。戦争中から戦後にかけては、多くの人々が空襲で家財を失い、食糧の欠配、よろこんで犬猫をくらい、豚のエサや雑草をくろう有様で、天下の珍事に類していた私の貧乏すらも物の数ではなくなってしまった。

私の貧乏は本人が覚悟の上のことであるから何でもないけれども、戦争の貧乏は人々がそれを欲していないのに身にふりかかってきたことで、しかも全く餓鬼道の底に達した貧苦であるから哀れである。

ちょうど太平洋戦争に突入する年のころ、私は小田原市のガランドウというペンキ屋の飯を食っていた。小田原の緑新道といえば目貫きの商店街であるが、そこに飯場の掘立小屋のような汚いウチがあって、それがガランドウの店だ。もっともお手のものの大きな看板でごまかしてるから通りから一見しただけでは分らないが内実は掘立小屋なのだ。店から奥の台所まで土間つづきと云いたいが、実はほかならぬ地球のむきだしの表土である。