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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

日本一のバカだぞ。それが分らねえのか、このヤロー」

と云って威張りたがる奴もいる。

しかし、酒場で酒をのんで酔っ払っているのは芸術家だけとは限らないから、詩人が酔っ払ったあげく見知らぬ隣人に、

「貴公もバカヤローらしいいい顔をしているな。どうだ。大いに飲もうや、なア、バカヤロー」

と杯をさすと、相手は血相を変えて、

「なにッ。オレをバカヤローと言ったな」とビールビンを握りしめて立ち上る代議士のような人種も少くない。だから詩人も酔って事を起すことはあるが、酔わずにバカヤロー騒動を起すことはないものである。

大臣だの代議士という連中は言葉というものを知らない。言葉の味というものについては平時に於ても無縁粗雑な生活を送っているから、国会でバカヤローについて争議を起すような不覚なことになるのである。

もともとバカとかバカヤローという言葉は甚だしく語呂がよく滑りがよいから、誰しも日に三度ぐらい、食事同様つい使いたくなる言葉である。

こういう使い心持がよくてつい滑りだすような軽快な言葉は、それを発することによって人に喜ばれ、人に快感を与えるように意味を切り換えておく方が便利だ。