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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

買う方に至っては、そんな大金が有りっこない。そのうちに金ができたら買いましょうなぞとお茶を濁していた。

そのころ獅子文六さんと会ったら、ゴルフをしなさい安吾さんや、とすすめるから、実は拙者もそのつもりで、十万円だか十五万円だかの金策に頭をなやましている旨を有りのまま伝えた。

すると文六さんは話半ばにカンラカラカラと笑いとばして、おもむろに眉をしかめて、

「世の中にお前さんぐらいバカな買い物をする人はないね」

「昔の金に換算すると、十五万円でも格安らしいですがね」

「いけませんよ。十万円は天下の大金です。初心者がそんなゴルフセットを持つ必要はない。お前さんは四万五千円で犬を買ったろう。犬に四万五千円の大金を投じるとは、なさけない人だね」

その席に坂西志保さんがいた。坂西さんは犬猫の大経験者であるから、

「コリーは高価な犬ですよ」

と取りなしたが、微醺をおびている文六さんは受けつけない。

「安吾さんの買い物には乱世の兆があるね。私が格安で手頃のゴルフセットを世話するから、乱世の商談はやめにしなさい」

その晩は文六さんのウィスキーの肴にされたが、もともとゴルフ道具は高価なもので、特に私が買う筈だったのは最高級品だったから、乱世の兆があるほどのソロバンとも思われない。