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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

「病院の配給料理はまずいね」

などとこぼしてはいるが、その配給料理の味のないようなカボチャの煮たのまで一ツ残さず食いあげてしまう。

青年男子とは云いながら、皮膚や骨柄の感じなどは深窓の佳人とでも云いたいような優形な彼らが、大江山の怪物のような食慾を発揮するから、私は目を見はったのである。一人の例外もなく、そうだった。

「特に結核の薬というのは、ないでしょう。ボクたちののんでる薬はオナカのすく薬だからね」

なぞと彼らは自己弁護をこころみたが、オナカのすく薬なら私も年中用いているが、こんな大食はとてもできない。

私の友人は東京で三人の名医に診てもらい、成形手術をたのんでみたが、余命はそれぞれ三ヶ月乃至三週間という見立てで、手術をするだけムダだと見放されて、高原療養所へ来たのであった。

その彼は今では東京で働いているし、一しょに食卓をかこんだ青年たちも、それぞれ退院して、職業につき、結婚しているそうである。

彼の余命を三ヶ月乃至三週間と診断した三人は東京でも第一級の名医である。私はその人たちの診断にはアヤマリがなかったのだと考えている。

彼らを生き返らせたのは、彼らの健康な胃袋だと私は痛感したのである。