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あすはてんきになれ
明日は天気になれ
「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页
私が見たうちで一番の大酒のみは自殺した田中英光である。
通説では文士は酒豪が多いようにいわれているが、商売柄運動不足で胃弱ぞろいだから、酔って賑やかなのは多いが、酒豪というほどの豪傑は少いのである。
田中英光だけは特別だった。なにしろ彼は往年ロスアンゼルスのオリンピックに出場したボートの選手で六尺、二十貫という健康児なのである。胃袋は特に健康だった。私の見かけた酒豪のうちでは、彼が日本一であるばかりか、二番との差もケタ違いのようだ。
彼は一日に三本ぐらいのウィスキーは軽くのむ。まだ足りなくて、酒やビールの梯子酒をするばかりでなく、酒だけではきかないので、酒のサカナに催眠薬をのむのである。
人々は催眠薬をのむと眠ってしまうから気がつかないが、催眠薬というものは、その酩酊の作用においてはアルコールよりも強烈なものである。
アドルムの十粒ものんで眠らずに起きていれば、一升の酒に足をとられたことのない男でも千鳥足になるし、ロレツもまわらなくなり、酔ッ払いよりもオシャベリになるものである。
田中英光はアドルムを二十粒三十粒ぐらいウィスキーのサカナにのんでいた。