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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

ただもう桜の花ざかりを野ッ原と同じように風がヒョウヒョウと吹いていただけである。そして花ビラが散っていた。

我々は桜の森に花がさけば、いつも賑やかな花見の風景を考えなれている。そのときの桜の花は陽気千万で、夜桜などと電燈で照して人が集れば、これはまたなまめかしいものである。

けれども花見の人の一人もいない満開の桜の森というものは、情緒などはどこにもなく、およそ人間の気と絶縁した冷たさがみなぎっていて、ふと気がつくと、にわかに逃げだしたくなるような静寂がはりつめているのであった。

ある謡曲に子を失って発狂した母が子をたずねて旅にでて、満開の桜の下でわが子の幻を見て狂い死する物語があるが、まさに花見の人の姿のない桜の花ざかりの下というものは、その物語にふさわしい狂的な冷たさがみなぎっているような感にうたれた。

あのころ、焼死者と焼鳥とに区別をつけがたいほど無関心な悟りにおちこんでいた私の心に今もしみついている風景である。

山里の悲劇

田舎の新聞を読んでいると、都の風を遠くはなれた山奥の里々、やっぱり人々がそれぞれの必死の苦心をはらって良く生き良く努めている涙ぐましいような出来事が目にふれるものである。