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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

したがって、構えが特に独特のうちでも独特で、基本の構え、そして一番普通の構えを「無構え」と称する。

右足を前に出して膝を九十度に折り、左足は後にグッとひいて、ややオリシキに似ているが、あれよりも後足がグッとうしろへ引かれていることと、後足の膝が地についていないところが違っている。

つまり、百米を全速力で疾走する人の瞬間写真のような姿で、その瞬間の姿は宙に浮いて走っているが、真庭念流の場合は両足が地についているだけの相違である。

力はその足に、特に後足にこもっている。いつでも地をけって飛びだす柔軟性をひそめて全部の力の支点となっている。

木剣はやや腕をまげて軽くひきつけて横に倒してかまえている。野球のバットを腰に構えたように横に木剣を倒して持つ。まだ力は木剣よりも足にかかっているのだ。速力が全部なのだ。それが真庭念流の構えである。

フシギな構えであるが、実は怖しいほど実用的な、理にかなった構えなのかも知れない。こうして、ジリジリと間をはかって、一瞬に三、四間の間をつめて一撃に勝負を決する。一撃に敵をうつにも、敵の一撃をかわして仕止めるにも、一番都合のよい構えかも知れないという気がした。