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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

その日北九州は積雪十五センチ。

ところが新年の三が日半死半生の悪酔いによってミソギをした私は、北九州の炭坑においては大そうリリしく立働き、文士も一かどのサムライであるというような声価を高めた。人は見かけによらないのである。

檀君らは、小生を最年長の故によって、事々に代表者とあがめ、ために私は雪上にハダカで演説もしなければならなかったし、坑内千五百尺の底においてアッサク空気のドリルをつかい、またダイナマイトを爆発させなければならなかった。ところが私は戦争で気がたっていたせいか易々これらをなしとげ、まったく動じる色がなかったので、採鉱課長が公式の席において「坂口氏は当炭坑が坑夫として採用したい唯一の人材である」というような讃辞を呈し、私はまたそれに答えて

「落盤事故がなかったのは、小生のイカンと致すところである」というように述べておいた。

私にダイナマイトを点火してごらんなさいというので「当炭坑において、一人の坑夫が一時にダイナマイトを点火した記録はなん発であるか」

「およそ二十発であろう」

「しからば余も一時に二十発点火いたそう」

「強がってはいかん。すでに貴公の顔色は変っている。