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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

アフリカのミヤゲ物は買わない方がよいのである。

桐生の織物組合長S君は私のゴルフ仲間で飲み仲間でもあり、また彼は素人考古学者、江戸文学素人大家等々、甚だ賑やかな人物である。彼は戦争前も戦争後も一貫して外貨カクトクの貿易用織物以外は絶対に作らぬという意地を通している。貿易が杜絶えて大貧乏におちいっても国内物を作って一時をしのぐというミジメなアガキをしない。歯をくいしばって貧乏の意地を通すのである。

「意地じゃアねえよ。奴の機械はタケが長くて国内物に合わないからだよ」

と商売仇は陰で悪く云うけれども、とにかくこの人物が一質して得体の知れない製品に打ちこんできた情熱というものは、ドンキホーテの生涯に通じる雄渾な悲哀があってアダオロソカにはできないものがあるようだ。

あるときイエメンの宗教大臣から直々の註文がきた。註文主から考えてもイエメンの宗教用の織物に相違ないが、その中に二種類だけ非常にデザインの秀抜なものがあった。S君はシメタと思った。

なにしろ勝手知らぬ異境の人を相手の取引きのことで、一番閉口するのはデザインだ。どういうものが愛されるか、という段になると、フランス人だのイギリス人相手なら目安がつくけれども、イエメンだのモロッコだのコンゴーのジャングルときてはだいたい見本が一ツも手にはいらない。