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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

仙台から北の牡鹿半島のノドクビに石の巻という漁港がある。ここにまだ三十そこそこの女アンマがいて、自分勝手なモミ方をする。ツボを心得ているようないないような不確かな手際で、指圧ともアンマともつかなくて、それでも怪力のせいか気持がよい。

「今日は旅館の特別の頼みで来てやったが、本当は私はウチを出ることはない。毎日朝から病人がつめかけて押すな押すなの繁盛なのさ」

と言っていたが、私の背中を散々探ったあげく、

「アンタの脊椎は右に軽く曲っとる。これが万病の元だから、これを真ッ直にするようにしなければいけない」

モットモらしくそんなことを言った。そのとき文藝春秋社のN君がいっしょに居たが、私が寝たあと、彼に向って、

「アンタの同行者は脊椎の曲りを直さないと病気が治らない」

と長々と一席ぶって戻ったそうである。その翌る晩もこのアンマをよんで訊いてみた。

「アンタのウチは代々この土地のアンマか」

「イエ、私は満州からの引揚者だ」

「満州でアンマをやっとったのか」

「収容所でアンマを覚えたのさ」

なるほどと私は思った。終戦後、引揚げの途中にアンマ――主として指圧を覚えたという半分神がかり的な術者が多いのである。