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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

升田も板谷も出来損いの剣術使いのような面魂で、肩先三寸斬られた傷がまだ治らないような風態である。

そこへもってきて、名古屋の新聞の御歴々というのが、どれが社長で、どれが編集局長で、どれが平社員だかとても区別のつけようがなかったのであるが、いずれもゲリラ部隊の新聞隊員という活気横溢の気鋭の士で「名古屋にもちょッとしたコーヒーを飲ませるウチがあるから」と、ワッショイ、ワッショイ、バラックのコーヒー店を占領する。

当時はちょッとしたコーヒーを飲ませる店がたしかに国宝的な時世であったが、国宝を鑑賞するにしては、どうも作法が荒っぽい。ゲリラ部隊が博物館へ坐りこんだような勇しい風景であった。

それより設けの酒席へくりこむ。ところが当時は料亭閉鎖の暗黒時代であるから、レッキとした新聞社の宴会だというのに、クラヤミの裏木戸からコソコソと泥棒のように一人ずつ忍びこむ。日本人全体が精神的にゲリラ化していた時世でもあったのである。

一パイ飲むまでの道程がこのようにゲリラ以外の何物でもなかったから、酒がまわると、大変な騒ぎになってしまった。もっとも、この責任の半分ぐらいは、あるいは私が負うべきであったかも知れない。