Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
「洒落てるともよ、じゃア捻じ込め」
二人は私娼窟へはいったが、しばらく経つと化かされたような、トボケた顔をして飛び出して来た。
「新助エー、いっぺえ掛かったなア」
「囮があんまりよかったからさ」
「俺の敵娼に出て来た女、ご丁寧な黒あばたさ」
「まだそれなら御の字だ、こっちへ現われた女とくると、眉毛と唇とが欠けてるんだ」
「饑えていたって手は出せねえ」
「別の蜆っ貝めっけようぜ」
露路を通りへ出たとたんに、羊羹色の黒紋附き、袴なしの着流し姿、編笠を深々とかぶっている、尾羽うち枯らした浪人の、典型であるといったような、そういう武士とぶつかった。
やり過ごして二人は振り返ったが、
「見たことのある野郎だなア」
「そうよナー誰だったろう?」
が、しかしもうそういった時には、その浪人は露路へ反れていた。
手荒く私娼窟の格子を開け、
「お吉」
と、声をかけながら、暗いじめじめした部屋へ通った。その浪人は平戸九十郎――本姓臼杵九十郎であった。
「お帰りかえ、いいご機嫌ねえ」
長火鉢ともいえないような長火鉢の前に、茶箪笥ともいえないような茶箪笥を背にし、先刻外伝たちを誘き入れた女――玉菊のお吉がさも伝法に、片膝を立てて坐っていたが、