Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
と又助は思った。
(介抱してすっかり正気にし、口説いて納得させてから、お情けにあずかるとしようかい?)
(駄目だ)
と又助はすぐに思った。
(この女いわば烈女型だ。俺のような人間が口説いたところで、承知するような女じゃアねえ。……だからよ、こんなように正体ない時、とりあえず体を貰ってしまうのさ。正気に返って怒り怨み、泣き喚いた時は後の祭り。と、女ってやつ妙なもので、そうなってしまうと観念するものさ)
しかし、織江は意識は取り返していた。ただ疲労極まって、五体が役立たないばかりであった。
自分の前に立っている男の、誰であるかも解っていた。自分と兄とをたぶらかして、九十郎につきあわせ、返り討ちにかけて殺そうとした、憎い怨みある又助だ!
そうして又助の態度や表情で、何をこの男が自分に対して、企てようとしているかも、彼女には解っているのであった。
(はずかしめようとしているのだ!)
こんな男にはずかしめられるほどなら、その前に舌噛んで死んでやろう!
しかし彼女のはげしい疲労は、抵抗することを許さないばかりか、舌を噛むことさえ許しそうもなかった。
眼をあくことさえやっとなのである。