Japanische Klassiker mit Furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lesen Sie 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 191.184 Zeichen · 379 Bildschirme
「それを田沼が隣りの部屋で、聞いていたのでございますわねえ」
「そうだそうだ、聞いていたそうだ」
「その翌日からの妾というもの、まあどんなに田沼の手のものに、虐められ苦しめられ嚇されましたことか」
「…………」
「そうしてそれ以来もう妾は、上様がお成りなされましても、お眼にかかること出来ませんでした」
「…………」
「恋し恋し上様恋しと、思い詰めて泣いておりました」
「そうであったか、気の毒だったのう」
「おのれやれ田沼覚えておれ、屋敷の秘密あらいざらい探り、屋敷を脱け出し上様にお逢いし、お知らせしようと思いまして……」
「屋敷の秘密探ったか?」
「上様、さぐりましてござります」
「話してくれ! 話してくれ!」
この部屋と隣り部屋とを境いしている、古襖の向こう側にしゃがみ込み、お浦を相手に問いかけていた、女勘助はこういったとたん、
「お前は誰だい!」
と女の声で、突然背後から声をかけられ、ギョッとして立ち上がり振り返って見た。
剥げた塗り膳に二種ばかりの、食物らしいものが載っている。――それを捧げた仇っぽい年増が、疑わしそうに眼をひそめ、すぐの背後に立っていた。
(南無三!)