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あすはてんきになれ

明日は天気になれ

坂口 安吾

「西日本新聞 第二四九四六号~第二五〇四六号」1953(昭和28)年1月2日~4月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,679 字 · 228 页

青空文庫

患者の方はコンニャクのほかにもその他何々の待遇改善要求があったのだが、コンニャクはカルシューム也という一撃によって全的に闘志を失い、もろくも敗北したという戦史があるのである。

つまり患者の方では、コンニャクこそは論より証拠、敵の最大弱点であると一途に思いこんでいたところに敗因があったらしい。かようにコンニャクというものは、見るからに、また見れば見るほどタンゲイすべからざる怪物で、こういうものを食いこなすようにしてしまったのは何物の力であるか、と考えると、人生は不可解の感を深めざるを得ないのである。

古事記を読むと、われわれの祖先は神話の昔からナマコを愛食している。磯の国々から朝廷への税としてナマコをほしたイリコというものを大昔から欠かさず奉っている。

中原中也という夭折した詩人が

「陸のコンニャク海のナマコ」

と呪文を唱えて大そう怖れていたが、私もナマコがどうしても食べられない。しかるに磯の魚貝も数ある中で、神代の昔からナマコを愛食していたわれわれの祖先というのは、無類の食通なのか、悪食なのか、タンゲイすべからざる祖先である。

いかに強力な暴君といえども臣民にコンニャクとナマコを強制することは不可能であろう。