Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
二
……どうも眼のせいとも思われませんが」
「ムム、なるほど。……そういわれてみれば、そんな気もする。炬火をともして、井戸の中を調べてみろ」
「はっ」
郎党たちは馳けて行った。
程なく、井戸のまわりでかざし合う炬火が彼方にうごいていた。そのうちに、郎党たちが、なにか、大声あげて騒ぎだした様子に孫堅も近づいてそこを覗いて見ると、水びたしになった若い女官の死体が引揚げられてあった。――すでに日も経ているらしいが、その装束も尋常の女性とは思われないし、なお、生けるままな容貌は白のように美しかった。
二
いや、そればかりではない。
死美人の屍には、もっと麗わしい物が添っていた。それは襟頸にかけて抱いている紫金襴の嚢だった。
蝋より真白い指が、しっかとそれを抱いている。――死んでも離すまいとする死者の一念が見えた。
孫堅は、そばへ寄って、近々と死体をながめていたが、
「なんだろう。はて、この嚢を取りあげてみろ」
郎党に命じて身を退いた。
彼の従者は、すぐ死美人の頸からそれをはずし取って、孫堅の手へ捧げた。
「おい、炬火を出せ」
「はっ」
従者は、彼の左右から、炬火をかざした。