Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
二
気にかかるので、時折、池の彼方の閣を見まもっていた。後堂の寝殿は、真午になって、ようやく窓をひらいた様子であった。
「太師には、ただ今、お目ざめになられました」
さっきの番将が告げに来た。
呂布は、取次も待たずに、董卓の後堂へ入って行った。そして、廊にたたずみながら奥をうかがうと、臥房深き所、芙蓉の帳まだみだれて、ゆうべいかなる夢をむすんだか、鏡に向って、臙脂を唇に施している美姫のうしろ姿がちらと見えた。
二
呂布は、われを忘れて、臥房のすぐ扉口の外まで、近づいて行った。
「オ……。貂蝉」
彼は、泣きたいように胸を締めつけられた。七尺の偉丈夫も、魂を掻きむしられ、沈吟、去りもやらず、鏡の中に映る彼女のほうを偸み見していた。
そして、煮え沸る心の底で、
「貂蝉はもう昨夜かぎりで、処女ではなくなっている! ……。ここの臥房には、まだすすり泣きの声が残っているようだ。……ああ、董太師もひどい。貂蝉もまた貂蝉だ。……それとも王允がおれを欺いたのか。いやいや董太師に求められては、かよわい貂蝉はもうどうしようもなかったろう」
彼の蒼白い顔は、なにかのはずみに、ふと室内の鏡に映った。