Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
七
母の惜しがる気持をなだめるつもりで彼がそういうと、何思ったか劉備の母は、
「ああ――わしは、お前のお父様に申しわけがない。亡き良人に顔向けがなりません。――わたしは、子の育て方を過った!」と、慟哭して叫んだ。
「何を仰っしゃるんです。おっ母さん! どうしてそんなことを」
母の心を酌みかねて、劉備がおろおろというと、母はやにわに、眼の前にあった錫の小さい茶壺を取上げ、
「阿備、おいで!」と、きつい顔して、彼の腕を片手で引っ張った。
「何処へです。おっ母さん。……ど、どこへいらっしゃろうというんですか」
「…………」
彼の母は、答えもせず、劉備の腕くびを固くつかんだまま、桃園の果てへ馳けだして行った。そしてそこの蟠桃河の岸までくると、持っていた錫の茶壺を、河の中ほど目がけてほうり捨ててしまった。
七
「あッ。何で?」
びっくりした劉備は、われを忘れて、母の手頸をとらえたが、母の手から投げられた茶の壺は、小さいしぶきを見せて、もう河の底に沈んでいた。
「おっ母さん! ……おっ母さん! ……一体、なにがお気にさわったのですか。なんで折角の茶を、河へ捨てておしまいになったんですか」