Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
四
四
貧しいながら、母子は久しぶりで共にする晩の食事を楽しんだ。
「おっ母さん、あしたの朝は、きっと歓んでいただけると思います。こんどの旅から、私はすばらしいお土産を持って帰ってきましたから」
「お土産を」
「ええ。おっ母さんの、大好きな物です」
「ま。何だろうね?」
「生きているうちに、もいちど味わってみたいと、いつか仰っしゃったことがありましたろう。それですよ」
母を楽しませるために、劉備も、それが洛陽の銘茶であるということを、しばらく明かさなかった。
母は、わが子のその気持だけでも、もう眼を細くして歓んでいるのである。焦らされていると知りながら、
「織物かえ」と訊いた。
「いいえ。今もいったとおり、味わう物ですよ」
「じゃあ、食べ物?」
「――に、近いものです」
「何じゃろ。わからないよ、阿備や。わたしにそんな好物があるかしら」
「望んでも、望めない物と、諦めの中に忘れておしまいになったんでしょう。一生に一度は、とおっ母さんが何年か前に云ったことがあるので、私も、一生に一度はと、おっ母さんにその望みをかなえてあげたいと、今日まで願望に抱いておりました」
「まあ、そんなに長年、心にかけてかえ? ……なおさら、分らなくなってしもうたよ阿備。