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Japanische Klassiker mit Furigana

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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme

Aozora Bunko

三

そして、冷たい額に手をあてながら、しばらく月を仰ぎ、瞑目していると、どこからか春雨の咽ぶがようなすすり泣きの声がふと聞えた。

「……誰か?」

王允は見まわした。

池の彼方に、水へ臨んでいる牡丹亭がある。月は廂に映じ窓にはかすかな灯が揺れている。

「貂蝉ではないか。……なにをひとりで泣いているのだ」

近づいて、彼は、そっと声をかけた。

貂蝉は、芳紀十八、その天性の麗わしさは、この後園の芙蓉の花でも、桃李の色香でも、彼女の美には競えなかった。

まだ母の乳も恋しい幼い頃から、彼女は生みの親を知らなかった。襁褓の籠と共に、市に売られていたのである。王允は、その幼少に求めてわが家に養い、珠をみがくように諸芸を仕込んで楽女とした。

薄命な貂蝉はよくその恩を知っていた。王允もわが子のごとく愛しているが、彼女も聡明で、よく情に感じる性質であった。

三

楽女とは、高官の邸に飼われて、賓客のあるごとに、宴にはべって歌舞吹弾する賤女をいう。

けれど、王允と、貂蝉とは、その愛情においては、主従というよりも、養父と養女というよりも、なお、濃いものであった。

「貂蝉、風邪をひくといけないぞよ。