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Japanische Klassiker mit Furigana

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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme

Aozora Bunko

二

「…………」

劉備は、木蓮の花に黄金の耳環を通したような、少女の貌を眼にえがいて、隣の息子を、なんとなく羨ましく思った。

そしてふと、自分の心の底からも一人の麗人を思い出していた。それは、三年前の旅行中、古塔の下であの折の老僧にひき合わされた鴻家の息女、鴻芙蓉のその後の消息であった。

――どうしたろう。あれから先。

張飛に訊けば、知っている筈である。こんど張飛に会ったら――など独り考えていた。

すると、墻の外で、しきりに歌をうたっていた少女が、犬にでも噛まれたのか、突然、きゃっと悲鳴をあげて、どこかへ逃げて行った。

二

少女は、犬に咬まれたわけではなかった。

自分のうしろに、この辺で見たこともない、剣を佩いた巨きな髯漢が、いつのまにか来ていて、

「おい、小娘、劉備の家はどこだな」と、訊ねたのだった。

けれど、少女は、振向いてその漢を仰ぐと、姿を見ただけで、胆をつぶし、きゃっといって、逃げ走ってしまったのであった。

「あははは。わははは」

髯漢は、小娘の驚きを、滑稽に感じたのか、独りして笑っていた。

その笑い声が止むと一緒に、後ろの墻の内でも、はたと、蓆機の音が止んでいた。