Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
八
――時の来ぬうちはぜひもないが、時節が来たら、世のために、また、漢の正統を再興するために、剣をとって、草廬から起たねばならぬぞと」
「……はい」
「阿備。――その剣を人手に渡して、そなたは、生涯、蓆を織っている気か。剣よりも茶を大事にお思いか。……そんな性根の子が求めてきた茶などを、歓んで飲む母とお思いか。……わたしは腹が立つ。わたしはそれが悲しい」
と、母は慟哭しながら、劉備の襟をつかまえて、嬰児を懲らすように折檻した。
八
母に打ちすえられたまま、劉備は身うごきもしなかった。
打々と、母が打つたびに、母の大きな愛が、骨身にしみ、さんさんと涙がとまらなかった。
「すみません」
母の手をいたわるように、劉備はやがて、打つ手を抑えて、自分の額に、押しいただいた。
「わたくしの考え違いでございました。まったく玄徳の愚かがいたした落度でございます。仰っしゃる通り、玄徳もいつか、土民の中に貧窮しているため、心まで土民になりかけておりました」
「分かりましたか。阿備、そこへ気がつきましたか」
「ご打擲をうけて、幼少のご訓言が、骨身からよび起されて参りました。――大事な剣を失いましたことは、ご先祖へも、申しわけありませんが……ご安心下さいお母さん……玄徳の魂はまだ此身にございます」