Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme

Aozora Bunko

九

九

誰か、のっそりと、無断で家の横から中庭へはいってきた。

劉備は、母と二人で、蓆を織っていた。無断といっても、土塀は崩れたままだし、門はないし、通り抜けられても、咎めるわけにもゆかないほどな家ではあったが――

「……おや?」

振向いた母子は目をみはった。そこに立った旅の老人よりも、酒瓶を背にのせている山羊の毛の雪白な美しさに、すぐ気をとられたのである。

「ご精が出るのう」

老人は、なれなれしい。

蓆機のそばに腰をおろし、なにか話しかけたい顔だった。

「お爺さん、どこから来なすったね。たいそう毛のいい山羊だな」

いつまでも黙っているので、かえって劉備から口を切ってやると、老人はさもさも何か感じたように、独りで首を振りながら云った。

「息子さんかの。このお方は」

「はい」と、母が答えると、

「よい子を生みなすったな、わしの山羊も自慢だが、この息子にはかなわない」

「お爺さんは、この山羊をひいて、城内の市へ売りに来なすったのかね」

「なあに、この山羊は、売れない。誰にだって、売れないさ。わしの息子だものな。わしの売物は酒じゃよ。だが道中で悪漢に脅されて、酒は呑まれてしもうたから、瓶は二つとも空っぽじゃ。