Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
と二人とも初めて、そうかと気づいた顔つきだった。
「だから少しでも天候の悪い日には、ほかの土地より何十倍も強い風が吹きまくる。この辺が、晴天の日でも、峡門には、黒雲がわだかまり、砂礫が飛び、煙雨が降り荒んでいる」
「ははあ、大きに」
「好んで、それへ向ってゆくので、近づけばいつも、賊と戦う前に、天候と戦うようなものになる。張宝の地公将軍とやらは、奸智に長けているとみえて、その自然の気象を、自己の妖術かの如く、巧みに使って、藁人形の武者や、紙の魔形など降らせて、朱雋軍の愚かな恐怖をもてあそんでいたものであろう」
「さすがに、ご活眼です。いかにも、それに違いありません。けれど、あの山の賊軍を攻めるには、あの峡門から攻めかかるほかありますまい」
「ない。――それ故に、朱雋はわざと、われわれを、この攻め口へ当らせたのだ」
玄徳は、沈痛にいった。
関羽、張飛の二人も、良い策もない、唇をむすんで、陣の曠野へ眼をそらした。
折から仲秋の月は、満目の曠野に露をきらめかせ、二十里外の彼方に黒々と見える臥牛のような山岳のあたりは、味方を悩ませた悪天候も嘘ごとのように、大気と月光の下に横たわっていた。