Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
五
彼は、慨嘆した。
見まじきものを見たように関羽はあわてて後苑の梨畑から馳け戻ってきた。そして客館の食卓の部屋をのぞくと、張飛はただ一人でまだそこに酒を飲んでいた。
「おい」
「やあ、何処へ行っていたのだ」
「まだ飲んでいるのか」
「飲むよりほかに為すことはないじゃないか。いかに脾肉を嘆じたところで、時利あらず、風雲招かず、蛟龍も淵に潜んでいるしかない。どうだ、貴公も酒の淵に潜まんか」
「一杯もらおう、実は今、いっぺんに酒が醒めてしまったところだ」
「どうしたのか」
「……張飛」
「ウム」
「おれは、貴様のように、いたずらに現在の世態や時節の来ぬことを、そう悲観はしないつもりだが、今夜はがっかりしてしまった。――野に隠れ淵に潜むとも、いつか蛟龍は風雲を捉えずにいないと信じていたが」
「ひどく失望の態だな」
「もう一杯くれ」
「めずらしく飲むじゃないか」
「飲んでから話すよ」
「なんだ」
「実は今、おれは、人の秘密を見てしまった」
「秘密を」
「されば。先頃から貴様が謎めいたことをいうので、こよい玄徳様が出て行った後からそっと尾けて行ってみたのだ。するとどうだろう……ああ、おれは語るに忍びん。