Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
或る日。
彼は陽城を出て、四頭立ての驢車に美人を大勢のせ、酔うた彼は、馭者の真似をしながら、城外の梅林の花ざかりを逍遥していた。
ところが、ちょうど村社の祭日だったので、なにも知らない農民の男女が晴れ着を飾って帰ってきた。
董相国は、それを見かけ、
「農民のくせに、この晴日を、田へも出ずに、着飾って歩くなど、不届きな怠け者だ。天下の百姓の見せしめに召捕えろ」と、驢車の上で、急に怒りだした。
突然、相国の従兵に追われて、若い男女は悲鳴をあげて逃げ散った。そのうち逃げ遅れた者を兵が拉して来ると、
「牛裂きにしろ」
と、相国は威猛高に命じた。
手脚に縄を縛りつけて、二頭の奔牛にしばりつけ、東西へ向けて鞭打つのである。手脚を裂かれた人間の血は、梅園の大地を紅に汚した。
「いや、花見よりも、よほど面白かった」
驢車は黄昏に陽城へ向って帰還しかけた。
するとある巷の角から、
「逆賊ッ」と、喚いて、不意に驢車へ飛びついて来た漢がある。
美姫たちは、悲鳴をあげ、驢は狂い合って、端なくも、大混乱をよび起した。
「何するか、下司っ」
肥大な体躯の持主である相国は、身うごきは敏速を欠くが、力はおそろしく強かった。