Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
そこで、曹操の身はたちまち、かねて備えてある鉄の檻車にほうりこまれ、明日にも洛陽へ護送して行くばかりとなし、守備の兵や吏事たちは、大いに酒を飲んで祝った。
日暮れになると、酒宴もやみ、吏事も兵も関門を閉じて何処へか散ってしまった。曹操はもはや、観念の眼を閉じているもののように、檻車の中によりかかって、真暗な山谷の声や夜空の風を黙然と聴いていた。
すると、夜半に近い頃、
「曹操、曹操」
誰か、檻車に近づいてきて、低声に呼ぶ者があった。
眼をひらいて見ると、昼間、自分をひと目で観破った関門兵の隊長なので、曹操は、
「何用か」
嘯く如く答えると、
「おん身は都にあって、董相国にも愛され、重く用いられていたと聞いていたが、何故に、こんな羽目になったのか」
「くだらぬことを問うもの哉。燕雀なんぞ鴻鵠の志を知らんやだ。――貴様はもうおれの身を生擒っているんじゃないか。四の五のいわずと都へ護送して、早く恩賞にあずかれ」
「曹操。君は人を観る明がないな。好漢惜しむらく――というところか――」
「なんだと」
「怒り給うな。君がいたずらに人を軽んじるから一言酬いたのだ。かくいう自分とても、沖天の大志を抱いておる者だが、真に、国の憂いを語る同志もないため、空しく光陰の過ぎるのを恨みとしておる。