Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
四
そして、曹操が先に、
「いざ逃げん」と、促すと、どこかでまだ、異様な呻き声をあげて、ばたばた騒ぐものがある。
厨の外へ出て見ると、生きている猪が、脚を木に吊されて、啼いているのだった。
「ア、しまった!」
陳宮ははなはだ後悔した。
この家の家族たちは、猪を求めて来て、それを料理しようとしていたのだ――と、分ったからである。
四
曹操は、もう闇へ向って、急ごうとしていた。
「陳宮。はやく来い」
「はっ」
「何をくずぐずしているのだ」
「でも……。どうも、気持が悪くてなりません、慚愧にたえません」
「なんで」
「無意味な殺生をしたじゃありませんか。かわいそうに、八人の家族は、われわれの旅情をなぐさめるために、わざわざ猪を求めてきて、もてなそうとしていたんです」
「そんなことを悔いて、家の中へ、掌を合わせていたのか」
「せめて、念仏でも申して、科なき人たちを殺した罪を、詫びて行こうと思いまして」
「はははは。武人に似合わんことだ。してしまったものは是非もない。戦場に立てば何千何万の生霊を、一日で葬ることさえあるじゃないか。また、わが身だって、いつそうされるか知れないのだ」
曹操には、曹操の人生観があり、陳宮にはまた、陳宮の道徳観がある。