Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
二
「ああ、故郷の山に似ている」
ふと、曹操の胸には父母のすがたがうかんできた。大きな月のさしのぼるのを見ながら、
「親不孝ばかりした」
驕慢児の眼にも、真実の涙が光った。脆い一個の人間に返った彼は、急に五体のつかれを思い、喉の渇に責められた。
「清水が湧いている……」
馬を降りて、彼は清水へ顔を寄せた。そして、がぶとひと口飲み干したと思うと、またすぐ近くの森林から執念ぶかい敵の鬨の声が聞えた。
「……やっ?」
ぎょッとして、駒の背へ飛び移るまに、もう残るわずかな郎党も矢に斃れたり、逃げる力もなく、草むらに、こときれてしまっている。
追いかけて来たのは、※(「螢」の「虫」に代えて「水」、第3水準1-87-2)陽城太守の徐栄の新手であった。徐栄は、逃げる一騎を曹操と見て、
「しめたッ」
ひきしぼった鉄弓の一矢を、ぶん! ――と放った。
矢は、曹操の肩に立った。
二
「――しまったッ」
曹操は叫びながら、駒のたてがみへうつ伏した。
またも、徐栄の放った二つの矢が、びゅんと耳のわきをかすめてゆく。
肩に突っ立った矢を抜いている遑もなかったのである。
その矢傷から流れ出る血しおに駒のたてがみも鞍も濡れひたった。