Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme

Aozora Bunko

「承知しました」

劉備は、勇気を示して答えた。

「けれど和上、あなたはどうしますか」

「わしかの」

「そうです。私たちを逃がしたと賊に知られたら、和上の身は、ただでは済まないでしょう」

「案じることはない。生きていたとて、このさき幾年生きていられよう。ましてこの十数日は、草の根や虫など食うて、露命をつないでいたはかない身じゃ。それも鴻家の阿嬢を助けて上げたい一心だけで生きていたが――今は、そのことも、頼む者に頼み果てたし、あなたという者をこの世に見出したので、思い残りは少しもない」

老僧はそう云い終ると、風の如く、塔の中へ影をかくした。

あれよと、芙蓉は、老僧を慕って追いすがったが、とたんに、塔の口もとの扉は内から閉じられていた。

「和上さま。和上さま!」

芙蓉は慈父を失ったように、扉をたたいて泣いていたが、その時、高い塔の頂で、再び老僧の声がした。

「青年。わしの指をご覧。わしの指さすほうをご覧。――ここの疎林から西北だよ。北斗星がかがやいておる。それを的にどこまでも逃げてゆくがよい。南も東も蓮池の畔も、寺の近くにも、賊兵の影が道をふさいでいる。逃げる道は、西北しかない。