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Japanische Klassiker mit Furigana

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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme

Aozora Bunko

それも今のうちじゃ。はやく白馬に鞭打たんか」

「はいっ」

答えながら仰ぐと、老僧の影は、塔上の石欄に立って、一方を指さしているのだった。

「佳人。はやくおのりなさい。泣いているところではない」

劉備は、彼女の細腰を抱き上げて、白馬の鞍にすがらせた。

芙蓉の体はいと軽かった。柔軟で高貴な薫りがあった。そして彼女の手は、劉備の肩にまとい、劉の頬は、彼女の黒髪にふれた。

劉備も木石ではない。かつて知らない動悸に、血が熱くなった。けれどそれは、地上から鞍の上まで、彼女の身を移すわずかな間でしかなかった。

「ご免」といいながら、劉備ものって一つ鞍へまたがった。そして片手に彼女をささえ、片手に白馬の手綱をとって、老僧の指さした方角へ馬首を向けた。

塔上の老僧は、それを見おろすと、わが事おわれり――と思ったか、突然、歓喜の声をあげて、

「見よ、見よ。凶雲没して、明星出づ。白馬翔けて、黄塵滅す。――ここ数年を出でないうちじゃろう。青年よ、はや行け。おさらば」

云い終ると、みずから舌を噛んで、塔上の石欄から百尺下の大地へ、身を躍らして、五体の骨を自分でくだいてしまった。

張飛卒