Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
二
百獣も為に怯み、曠野を野彦して渡るような大喝が、唇から無意識に出ていたのである。
賊は、ぎょっとし、劉備の大きな眼の光におどろき、驢は彼の大喝に、蹄をすくめて止った。
だが、それは一瞬、
「何を、青二才」
「手むかう気か」
驢を跳びおりた賊は、鉄弓を捨てて大剣を抜くもあり、槍を舞わして、劉備へいきなり突っかけてくるもあった。
二
どういう悪日と凶い方位をたどってきたものだろうか。
黄河の畔から、ここまでの間というものは、劉備は、幾たび死線を彷徨したことか知れない。これでもかこれでもかと、彼を試さんとする百難が、次々に形を変えて待ちかまえているようだった。
「もうこれまで」
劉備もついに観念した。避けようもない賊の包囲だ。斬り死せんものと覚悟をきめた。
けれど身には寸鉄も帯びていない。少年時代から片時もはなさず持っていた父の遺物の剣も、先に賊将の馬元義に奪られてしまった。
劉備は、しかし、
「ただは死なぬ」と思い、石ころをつかむが早いか、近づく者の顔へ投げつけた。
見くびっていた賊の一名は、不意を喰らって、
「あッ」と、鼻ばしらをおさえた。
劉備は、飛びついて、その槍を奪った。