Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
と、煩悩にとらわれていた。
ふと、彼は、
「きょうは必ず董卓の退出は遅くなろう。……そうだ、この間に」と考えた。
むらむらと、思慕の炎に駆られだすと、彼は矢も楯もなかった。
にわかに、どこかへ、駆けだして行ったのである。
董卓の留守の間に――と、呂布はひとり相府へ戻って来たのだった。そして勝手を知った後堂へ忍んで行ったと思うと、戟を片手に、
「貂蝉。――貂蝉」と、声をひそめながら、寵姫の室へ入って、帳をのぞいた。
「誰?」
貂蝉は、窓に倚って、独り後園の昼を見入っていたが、振向いて、呂布のすがたを見ると、
「オオ」
と、馳け寄って、彼の胸にすがりついた。
「まだ太師も朝廷からお退がりにならないのに、どうしてあなただけ帰って来たのですか」
「貂蝉。わしは苦しい」
呂布は、呻くように云った。
「この苦しい気もちが、そなたには分らないのだろうか。実は、きょうこそ太師の退出が遅いらしいので、せめて束の間でもと、わし一人そっとここへ走り戻って来たのだ」
「では……そんなにまで、この貂蝉を想っていて下さいましたか。……うれしい」
貂蝉は、彼の火のような眸を見て、はっと、脅えたように、