Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
「…………」
「血しぶく戦場で、――また、戦に敗れて落ち行く草枕の寝覚めに――幾たびとなく拙者はこの剣を抜き払ってみた。そして、そのたびに、拙者は剣の声を聞いた」
「…………」
「劉君、其許は聞いたことがあるか、この剣の声を!」
「…………」
「一揮して、風を断てば、剣は啾々と泣くのだ。星衝いて、剣把から鋩子までを俯仰すれば、朧夜の雲とまがう光の斑は、みな剣の涙として拙者には見える」
「…………」
「いや、剣は、剣を持つ者へ訴えていうのだ。いつまで、わが身を、為すなく室中に閉じこめておくぞと。――劉備どの、嘘と思わば、その耳に、剣の声を聞かそうか、剣の涙を見せようか」
「……あっ」
劉備も思わず石欄から腰を立てた。――止める間はなかった。張飛は、剣を払って、ぴゅっと、秋風を斬った。正しく、剣の声が走った。しかもその声は、劉備の腸を断つばかり胸をうった。
「君聞かずや!」
張飛は、いいながら、またも一振り二振りと、虚空に剣光を描いて、
「何の声か。そも」と、叫んだ。
そしてなおも、答えのない劉備を見ると、もどかしく思ったのか、橋の石欄へ片足を踏みかけて、枯蓮の池を望みながら独り云った。